岐路に立つグローバリゼーションと歴史実践

岐路に立つグローバリゼーションと歴史実践

主催:科研費・基盤(A)「アジア・太平洋戦争史」の比較と総合:国際的研究教育プログラムの開発

2017年3月4・5日

一橋大学(東京都国立市)
東キャンパス・第3研究館 研究会議室(3階)

交通のご案内
キャンパス内地図(39番の建物)


 コンファレンス・アジェンダ

 2008年、政治経済学者のダニ・ロドリックは国際金融危機がもたらした混乱をへてグローバリゼーション・コンセンサスは失われたと述べた。2016年のイギリス国民投票によるEU脱退(Brexit)および米大統領選挙におけるトランプの勝利により、今や私たちはあらたなグローバリゼーション・コンセンサスの危機に瀕しており、2017年にはさらなる政治の混乱が予想されている。このような状況をふまえ、科研費(基盤研究A)共同研究プロジェクト「『アジア・太平洋戦争史』の比較と総合:国際的研究教育プログラムの開発」主催による第3回国際会議は、グローバリゼーション・コンセンサスの危機が、いま、戦争と暴力の近現代史に関する知識や見方を記述し、教え、広めるという広い意味での歴史実践の営みに対して、どのようなインパクトを与えようとしているのか、歴史実践はどうあるべきなのかを議論していく。


プログラム

3月4日 13:30 – 17:30

セッション1「岐路に立つグローバリゼーションと歴史叙述」

 研究者、教員またはさまざまの領域の専門家として、20世紀に起きた二つの世界大戦や大量虐殺といった暴力の歴史に関心を持ち、その記憶と和解、相互理解といった課題をめぐって歴史実践の営みに関わろうとする者は、いま、人権のような普遍的価値や、第2次世界大戦後に欧米民主制が主導した自由主義的な国際秩序の受容に関する理解の共有がはたして可能なのかという問いに直面している。リベラルな国際主義が善であるという推定は、ほとんどの近現代史家のあいだで長いあいだ疑問をもたれることがなかった。しかし、冷戦終結後──当初はリベラル・デモクラシーの約束の地であるかにみえた──グローバリゼーションは、現実には世界各地でポピュリスト・ナショナリズムの台頭をもたらしてきている。このような近年の世界規模における政治の動揺を前にして、いま私たちは、グローバリゼーション・コンセンサスをめぐる現在の危機が、近現代における戦争と暴力の歴史とその見方を叙述し、教え、広める歴史の実践者にとってどのような影響を与えているのかを再考することを求められているのではないだろうか。このような問題関心から、本会議全体の基調となるセッションとして、本セッションは戦争の現代史を牽引する研究者たちを招き、歴史叙述がいまどのような課題に直面しているのかを議論していただく。

司会
中野聡(一橋大学)

報告
イーサン・マーク(ライデン大学)「ヨーロッパ中心の第2次世界大戦史叙述を問い直す」

楊大慶(ジョージ・ワシントン大学)「歴史共同研究と『国境を越える歴史学』の行方」

リカルド・ホセ(フィリピン大学)「バタアン戦を再戦する:相克するフィリピン防衛戦(1941-42年)の記憶と歴史像」

清水さゆり(ライス大学)ご案内をお待ちください

コメント
バラク・クシュナー(ケンブリッジ大学)


3月5日 11:00 – 13:45

セッション2「グローバル教育における戦争史のペダゴジー」

本セッションは、留学生のように教育の背景がそれぞれに異なる学生たちにどのように戦争や暴力の歴史を教えるのか、その方法について議論する。文科省の方針を背景として、現在、日本の大学は教育のグローバル化という共通の課題を抱えている。しかし、戦争や暴力の歴史という主題は異なる歴史観や相反する解釈が存在し、その教育にはしばしば困難がつきまとう。本セッションはアメリカ・東南アジア・日本から報告者を招き、実際に戦争と暴力をいかに教えているのか、その方法や実践例を共有する。報告者からの話題提供の後、セッションの参加者にも実践例や教育法について紹介してもらい、報告者と参加者が一緒になって議論をしていきたい。

司会
根本雅也(一橋大学)

報告
アン・プレスコット(ファイブカレッジ・コンソーシアム)「アメリカの教師たち:聴き学ぶ他者の声」

加藤圭木(一橋大学)「日本軍『慰安婦』問題を大学でどう教えるか」

斎藤一晴(明治大学)「歴史対話としての日韓・日中授業交流」

斎藤弘久(シンガポール・マネージメント大学)「加害者と被害者の再帰的対話としての社会科学」


15:00 – 17:05

セッション3「グローバリゼーションとその行方:「ポスト真実」の時代における戦争の展示と語り」

私たちは再び窮状にいるのだろうか? ジェームズ・クリフォードは、西欧中心主義、帝国主義的構造、権威的知識、そしてなにより他者を代弁する独占的な力のゆえに、文化の概念を批判した。それから30年、ミュージアムや大学は多文化主義を重視し、展示やカリキュラムに多様で多層的な視点を導入してきた。戦争というテーマに関しては、歴史理解の比較と共有、和解の深化が進められてきた。これらに並行して起きていたのは20世紀末からのグローバリゼーションによる様々な影響だったが、近年、グローバリゼーションは転機を迎えている。ローカルでポピュリスト的な関心が国際的な共通の価値を上回るなら、平和や人権、多様性といった普遍的な理想は一体どうなるのだろうか。グローバリゼーションが持っていた合意が崩れ、信頼できない根拠により議論が混乱する「ポスト真実」の時代に、ミュージアムはどのように戦争を説明し、教えることができるのだろうか。

こうした文脈を踏まえ、本セッションは学芸員と研究者を招いて次の二点を検討する。(1)グローバリゼーションが戦争に関する展示にもたらした影響を振り返る。ネオリベラルの政治、経済改革、公的部門の縮小、財政的問題、巨大資本と地域の格差の拡大などについて触れられるだろうが、その他にも多くを議論したい。(2)ミュージアムがグローバリゼーションの変化の波にどのように対応しうるのかについて意見の共有と議論を行う。クリフォード以降、ミュージアムの政治性が問われてきたが、一方でミュージアムは政治介入に敏感になり、自己規制も起きているように見受けられる。平和が厄介な問題になったとして、ミュージアムには表面的な中立主義以外の道があるのだろうか。様々なミュージアムの実践や知識を紹介することで、本セッションは社会教育の手段としてのミュージアムの役割を検討し、どのように戦争・歴史・社会をつなぐことができるのかを議論する。

司会
丸山雄生(一橋大学)

報告
兼清順子(立命館大学国際平和ミュージアム)「戦争をめぐる多様な視点の交差点としての博物館」

カール・チュア(アテネオ・デ・マニラ大学)「想起を通じた忘却:第二次世界大戦の記念碑とツーリズム」

馬暁華(大阪教育大学)「日中の第二次世界大戦展示:東アジアの記憶・国民形成と葛藤」


17:05 – 17:30

総括討論


特別展示(会議中両日)

インスタレーション

土屋大輔&広島ビジュアル・エスノグラフィ研究会
「レプリカ交響曲《広島平和記念公園 8 月 6 日》(2015) 」

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